ちょっと小話
石川県に引っ越して生活が落ち着いてきたころ、晩酌のお供に地元で作られるおつまみを調達しようと近江町市場へ行き、購入したのが「丸干しいか」。
自宅で炙り料理の類をしたことがなく、どれくらい匂いや煙が出るのか見当もつきませんでしたが、幸い家のキッチンは風通しがいい。思い切ってコンロ用の焼き網とステンレス製のトングを買い、初めての炙りに挑戦しました。
近くに住む家族にもあげようと両親の家へ持っていくと、見た途端に「懐かしい! お母さんの実家で作っていたんだよ!」と声を弾ませる母。七尾市内にある実家では水産加工業を営んでいたので、母にとっては幼いころからよく食べていたそう。
私にとっての実家(母のキッチン)では匂いや煙の出る料理は敬遠されていたので、初めて聞く母の思い出話を肴に、実家ではおそらく初めての炙りを家族で楽しみました。
1人で炙りに挑戦したときには、それ自体が楽しいものだと感じていましたが、誰かと話に花を咲かせながら一緒に食べるのもまた、良いものですね。
イカのうまみを余すところなく!
部位によって変わる味わいが面白い
日本海産のスルメイカを、イカから作る魚醤「いしり」を使った添加物不使用の特製調味液に漬け込み干し上げられる、柔らかい「丸干しいか」。もみほぐしながら味をなじませる製法から、地元では「もみいか」とも呼ばれています。
基本の食べ方は、オーブントースターや魚焼きグリルで軽く焼くか、網の上で炙りながら。身の柔らかさも楽しむために、焼き過ぎは厳禁です。胴体下部にハサミを入れると、トロトロのワタがたっぷりお目見え。濃厚なコクとまろやかな苦みが堪能できるこの部分こそ、丸干しいかの醍醐味と言えます。
頭に近づくほどに、胴体の内側に広がったワタが乾き焼けて香ばしくなり、これまた美味。
ゲソは一番塩気が強く、弾力のある歯応えが楽しめる。焼けた吸盤のカリッとした食感がアクセントになり、こんがり焼けた風味と、かめばかむほどにじみ出てくるイカの甘みがたまらない。
つなぎのあたりは、身の甘み、塩味、コクが相まって、うまみがぎゅぎゅっと凝縮している。ここでキュキュッと日本酒で締めたい。もちろん、ビールとも相性が良さそうです。
寒い季節には、熱燗が最高に合うことでしょう。塩辛く感じるときには、焼く前に清酒や水に10分程度浸しておく。すると、少し塩気が抜けて冷めても柔らかいままだというから、ひと手間掛けるかいがあります。
平たく見えてワタたっぷり! どこから食べて、どこで終えるか、迷うのも幸せだー!
『丸干しいか』
※グラム販売です。価格は店頭、通販サイトなどでご確認ください。
株式会社西海水産
石川県羽咋郡志賀町西海千ノ浦ヲ11