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フード&ドリンク

【10月15日オープン】『六月の舟歌』が奏でる、暮らしに寄り添うパンの世界

天然酵母に魅了されたベーカーが作る、素朴なパン


金沢の駅西エリアにひっそりとオープンして早くも話題を集めているベーカリー『六月の舟歌』さん。関西のベーカリーで腕を磨いた中村由希さんがオープンさせた注目店です。

お店は金沢駅から徒歩約10分。けやき通りから一本入ったオフィス街にある公園の目の前。駐車場の一角にあるログハウス風の建物が目印です。オープン時にチラシを作って近隣に配っただけなのにも関わらず、連日売切れるほどの盛況ぶり。遠方からも多くの人が訪れ、インスタグラムのフォロワーは早々に1000人を超えています。

全粒粉を使ったリーンなパンを中心に、素材を厳選して毎日約15種類のパンを焼いています。

シンプルな素材で豊かな味わいを生み出す酵母の力


店の看板商品「紅茶とオレンジピールのパン」。無骨な手触り感からは想像できないやわらかさが特徴です。割ってみると上質な焼き菓子のようなフルーティな香りに心が奪われます。水の代わりにアールグレイの紅茶を使い、オレンジピールが濃密な風味を演出しています。外はもっちり。中はふわふわ。中村さんの母親の知り合いから譲ってもらった福島のリンゴから起こした酵母菌を継ぎ足して自家培養したものを使っています。

じゃがいもを乗せて焼き上げた素朴なパン。クラストはみっしりと香ばしい焼き加減で、クラムはひきのあるソフトな食感。生地に練りこんだハッシュドポテトの甘さだけで素材の力を前面に引き出した、昔ながらの調理パンのようななつかしさを感じさせる味わいです。

押麦とひまわりの種をトッピングしたスペルト小麦と全粒粉のパン。どっしりと力強い見た目が印象的。生地にチーズ、黒ゴマ、胡桃が練り込まれています。ひと口食べるたびに小麦の風味が広がり、胡桃のザクザクとした食感がアクセントになっています。

天然酵母のパン作りは自由に満ちている


『六月の舟歌』さんが提案するのは、普段の食事でお漬物や煮物と一緒に気軽に食べられるパン。シンプルな素材で作られたパンにはひと口食べるだけで元気が湧いてくる力があります。酵母に寄り添っておいしいパンを作っていきたい。そんな想いで、毎日のパン作りに取り組んでいらっしゃいます。

中村さんが天然酵母のパン作りに惹かれる理由は、その自由さにあります。先入観にとらわれず、さまざまな作り方を試してみることで、時には想像以上の成果を得ることがあります。その瞬間、やっていて良かったと心から感じると言います。

どんなレシピにも書かれていない独自の製法にたどり着いたとき、それが中村さんにとって特別なものとなり、他にはない魅力を持つパンが生まれます。このような体験は、パン職人としての喜びの一つと言えるでしょう。中村さんのパン作りは、創造性を大切にしながら新しい発見を楽しむ旅でもあります。これからの挑戦がどんな新しいパンを生み出すのか、とても楽しみです。

スペルト小麦と全粒粉のパン。香ばしいひまわりの種、かぼちゃの種と自然な甘みのレーズンが調和しています。かみしめるほどに深い小麦の味わいが香ります。和食にも洋食にも合うようなプレーンなパンとしておすすめ。

パンの世界を探求する、その原点にある想い


国産の小麦で焼き上げたスイスのハード系パンのビューリー。成形に技術と手間を要する高加水の生地に取り組み、何度も試作を重ねて完成した思い入れのあるパンです。豊かな甘みにしっかりとした小麦の風味が混ざり合い、複雑な味わい。ココアを練り込んだ真っ黒な生地の中にチョコとクランベリーが入っています。ココア&クランベリーのビューリーの他に、クランベリー&レーズン&胡桃&ブルーベリー、マロングラッセ&胡桃の2種類あります。

このパンは、新店オープン直前まで思うように膨らまず、中村さんを悩ませ続けました。特に難しかったのが焼成。ストウブ鍋に氷を入れて生地を蒸し焼きにすることでクラストのもっちりとした食感を追求しました。中村さんのこだわりは、余計なものを一切使わず、酵母の力だけでパンを作ること。その信念がこのカンパーニュに独特の味わいを与えています。ライ麦の全粒粉20%と全粒粉20%をミックスした粉を使用しています。

中村さんの原点は、京都の製菓製パンの学校に通っていた頃、関西のベーカリーを巡った中で出合った滋賀県のベーカリー『ルシェル』さんのパンでした。「天然酵母といえば硬くて酸っぱいと思っていたのですが、『ルシェル』さんのパンは、ふわふわで小麦のふくよかな香りがしてとてもやわらかったんです。私はこんなパンが作りたいと思いました」。その思いを叶えるために『ルシェルさん』の門を叩きます。約4年間フランスパン、食パンを中心にパン作りに精進され、その後京都の「おくだ」さんで2年間、菓子パンや総菜パンなど幅広いパン作りを経験されました。

新しい発見があるから、パン作りはおもしろい


中村さんは、新しいアイデアをどんどん取り入れています。「今はSNSでレシピがオープンになっています。いろいろ試して自分らしいパンを作っていければと思っています」。そんな新しい発想の元になっているのは、パン作りの可能性を広げていきたいという持前の好奇心。お店のSNSでも積極的に自身のパン作りの悩みや製法の工程などを公開して、パンの技術を多くの人と高めあっていければいいと考えていらっしゃいます。

イギリス南西部バース地方のサリーランという生地を使ったあんぱん。粒あんとクリームチーズをサンド。金沢の製餡会社のこだわり粒あんは小豆の風味が生きています。

バゲット生地にチーズをたっぷり練りこんだパン。

生活の糧として暮らしに寄り添うパンを目指して


最近中村さんが取り組んでいるのは、白山市で採れた柿の実から起こした酵母を使ったパンです。元々酵母に魅了されてパン作りの世界に入っただけに、自家製酵母への思い入れもあります。現在は、季節の果物を使ったその時期にしか楽しめないパンの開発に興味があるとのこと。天然酵母パンは難しいイメージがありますが、自分なりにアレンジして、子どもも大人もみんなで楽しめるようなパンを紹介したいと考えているそうです。

好奇心を持って新しいパン作りに挑戦する中村さん。これからどんなパンを生み出してくれるのか、期待が高まるばかりです。

店舗情報


店舗名
天然酵母パン 六月の舟歌
住所
金沢市駅西本町1丁目10-12
電話
070-4570-0618
営業時間
10:00~16:00 ※売切れ次第終了
定休
月曜、木曜、日曜・祝日
駐車場
3台
WEB
https://www.instagram.com/funauta6/
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河原剛

河原剛

プランナー/雑誌編集長

金沢で生まれ、金沢で育つ。大学を卒業後、出版社に入社し、タウン情報誌の編集・営業に携わる。和洋菓子店・ベーカリーをはじめ、小売店、飲食店、サービス業まで幅広いジャンルの雑誌広告や記事の制作、店舗販促のサポートを経験する。現在は、コピーライティング、コンテンツマーケティング、クラウドファウンディングの制作サポートなどに従事。地元金沢のモノづくりを発信するプロジェクトを企画中。

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