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フード&ドリンク

【金沢あんこ巡り09】『HORITAPAN』のあんパン

「FARM TO BAKERY」を通じて新たな価値を創造する老舗八百屋のベーカリー


金沢のおいしいあんこを巡る連載シリーズ9回目は、今年誕生した新しいベーカリー『HORITAPAN』さんをご紹介します。金沢の老舗の八百屋『堀他』さんが営むこちらのお店は2024年4月19日にオープンしました。

お店の場所は、『Patisserie & Parlor Horita 205』さんから歩いてすぐの住宅街の一角。赤い扉が目印です。

「八百屋がプロデュースするベーカリー」をテーマに、毎朝厨房に届くフレッシュな野菜やフルーツを生かした素材感のある味わいのパンを提供しています。

約80種類のレシピがある中で、店頭には常時約40から50種類のパンが並びます。手作りの惣菜系が10から15種類。マヨネーズ、タルタルソースもこだわりの自家製。メロンパンなどの甘いパンも豊富です。

食事パンも充実しています。こちらは国産小麦キタノカオリを使用した「パン・ド・ミー」。

やわらかい菓子パンの生地でつくられた「豆パン」。

自家製のあんこを心行くまで味わえるあんパン三兄弟


店内でひときわ目を引くころころと丸いかわいいフォルム。粒あんがずっしりと入ったあんパンは3種類です。


『HORITAPAN』さんのあんパンをご紹介します。

  • 自家製あんパン……菓子パン生地を使ったシンプルな定番
  • 揚げきな粉あんパン……きな粉をまぶした揚げパンにあんこをたっぷり挟んだおやつパン
  • あんバターサンド……抹茶生地のパンに豆乳バターと自家製あんこをサンド

定番の「あんパン」は、生地45gに対して約2倍(70から80g)のあんこが入っています。三温糖を使って香りに深みを与えたしっとり系の生地にあんこの風味がなじんでみずみずしい食感が味わえます。

「揚げきな粉あんパン」は、きなこを練り込んだ生地を揚げてあんこをサンド。豆感満載です。

抹茶生地にあんこと豆乳バターをサンドした「あんバターサンド」。もっちりとした食感とさっぱりとした味わいがやみつきになります。

和菓子好きなシェフが手掛ける自家製あんこ


新しいベーカリーの立ち上げに際し、あんパンの要となるあんこの開発を任されたのは、フランス料理のシェフ経験がある中村さんです。和菓子愛好家でもある中村さんは、シェフ時代に培った多様な料理ジャンルの知識を生かし、あんこ作りに挑戦しました。

「小豆と砂糖を毎日同じように炊いたつもりでもちょっと違います。煮詰めすぎたり、煮詰め方が弱かったり、試行錯誤を重ねました」と中村さんは言います。小豆と砂糖を炊くというシンプルな作業に深い意味を見いだし、炊き方や材料の配合など、あんこ作りの各工程に細心の注意を払い、『HORITAPAN』さんのあんこを完成に導きます。

あんこには甘さ、テクスチャー、香りなど、様々な要素があります。今回のあんパン開発において、最も苦心したのはみずみずしさの保持でした。『HORITAPAN』さんのあんパンは焼き上がった生地にあんこを詰めます。この方法では、生地がすでに完成しているため、あんこの水分を吸収しやすくなります。そこで、あんこにできるだけ水分を保持させ、しっとりとした食感を維持しながら、小豆本来の風味を最大限に引き出すことを目指しました。

砂糖は、様々な種類を試してパン生地の味を邪魔しない上白糖にたどり着きます。豆の風味を損なわないように、砂糖の量は一般的な和菓子のあんこに比べて控えめ。また、和菓子のあんこは塩を加えるのが一般的ですがが、中村さんのあんこは塩を加えません。パン生地自体に塩分が含まれているためです。あんこにも塩を加えてしまうと塩っ気が重なり合って強くなりすぎ、小豆本来の風味が失われてしまうのです。

あんこの炊き上がりの目安は、しゃもじで混ぜたときに鍋底が見える位になったときです。豆をつぶさないようにやさしく混ぜながら、小豆の半分が溶けて、残りの半分が粒のまま残っている状態を目指します。

中村さんが考える、『HORITAPAN』さんのパン生地に合う理想のあんこは水ようかんのような状態。パンに挟んだ際にあんこの水分でしっとりとした状態になり、冷たい状態でもあんこがなめらかにパンと馴染むようなものです。

「ひと口目だけでなく、食べている間も、食べた後の余韻も楽しんでいただきたいです」と中村さん。『HORITAPAN』さんのあんパンには、作り手の想いが溢れています。「おいしいものを作るためには妥協できません。しっかりと食材と向き合って、いつもお客様の笑顔を想像しながらあんこを作っています」とお話してくれました。

お客様にとってベーシックであり続けること


1878年に創業以来、金沢の食文化を支え続ける『堀他』さん。時代とともに事業を拡大し、百貨店の出店から、卸売事業、加工事業、ギフト事業、そして飲食事業まで、多角的な展開を行っています。

金沢人なら誰もが間違いないと安心する『堀他』さんのブランド力。パーラーをはじめとした直営の飲食店を通して、高い品質やサービスを大切にする姿勢を気軽に肌で感じられます。

『HORITAPAN』さんには、他店にはない独自のアイデアを取り入れたパンが豊富に揃っています。ぜひ、様々なパンとの出会いを楽しみにお出かけください。

店舗情報


店舗名
HORITAPAN
住所
石川県金沢市野田2丁目163
電話番号
076-225-3332
営業時間
8:00~18:00 ※売切れ次第終了
定休
水曜
WEB
https://horitapan.com/
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河原剛

河原剛

プランナー/雑誌編集長

金沢で生まれ、金沢で育つ。大学を卒業後、出版社に入社し、タウン情報誌の編集・営業に携わる。和洋菓子店・ベーカリーをはじめ、小売店、飲食店、サービス業まで幅広いジャンルの雑誌広告や記事の制作、店舗販促のサポートを経験する。現在は、コピーライティング、コンテンツマーケティング、クラウドファウンディングの制作サポートなどに従事。地元金沢のモノづくりを発信するプロジェクトを企画中。

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